モズライト”の製作
ギターのロールスロイスといわれるモズライト・ギターを作ろうと思います。作ると云ってもネックやビブラミュート・ブリッジやギター・マイクといったパーツは工業製品で、とても素人の手に負えるものではありませんから、今回はDIYでなんとかなるボディーの部分です。
 ギターの音は聴いてすぐわかるものです。モズライト・ギターの音色は独特で、かっちりとした重く澄んだ音色のギブソンや明るく軽やかなフェンダー・サウンドと違い、よく言えばコクがある、悪く云えば濁りのある、打楽器のようなアタックとあまり伸びないサスティーンのためにオールラウンドの音楽には向いていない、唯一、ベンチャーズ・サウンドだけに特化した音のギターのように云われています。

 65年に来日した当初は、設計電圧が114Vであったことと、ボリュームをフルにした状態で鳴らされたために、非常にひずんだ音で、いわゆる伝説のライブの音として、いまだにマニアの目指す音の代表となっていますが、実際にはふつうに鳴らすと澄んだ綺麗な、魅力的な音なのです。当時ランチャーズという加山雄三の作ったバンドの音が、本当のモズライトの音だったのでしょう。最初は加山雄三だけがモズライトで、他のメンバーは日本製のエレキ・ギターだったのですが、音があまりにも違いすぎて、後のメンバーもモズライトに変えさせたという逸話が残っています。それくらい、音の個性が際だっています。いったい、何がそうさせているのか、楽器の構造上、大変興味深い問題ではあります。

 ノーキー・エドワーズがモズライト・ギターの創始者セミー・モズレーの元に、自分の使用しているテレキャスターのネックを細く、薄くしてもらいたいといって訪れたときに、そこにあったモズライトの原型に目がとまり、弾いて見たところ、大変気に入り、自分の新しいレコーディングで使いたいと申し出て、ベンチャーズの他のメンバーにも紹介し、新しいレコード”サーフィン”から使い始めたというのが伝説の始まりでした。モズライト・ギターのネックが細く薄いのは、単に手の小さいモズレーの奥さんが弾きやすいようにしただけだったのですが、これがベンチャーズサウンドにぴったりだったというのがおもしろいところです。
 私も、その話を知っていたので、テレキャスターのネックを削り、細くて薄いものに変えて見たところ、確かに、その効果は大きく、ベンチャーズサウンドの秘密の一つだなと実感しています。
 
 モズライトギターのオリジナルはバスウッドと木材で作られていました。これはソリッドギターのボディとしては理想的ではないのですが、柔らかいために削りやすく、整形が容易でした。モズレーがギター制作者として当初、木材にこれを選んだ理由がうなずけます。大量に安く手に入った木材でした。
 このような木材は内部損失が大きくサスティーンが伸びないので、打楽器のようなアタック音に付随してボディー内を音が巡るうちに音の周波数の配分が変わりやすく、堅くて重い木材に比べて不安定な感じがします。一定の音色が続くギブソンのギターの正反対の音です。でも、これがノーキーが気に入った音色だったのですね。簡単に言えば味があり、渋みもあって個性的な音色です。ノーキーのようなテクニックのあるギタリストが、速いパッセージを弾くと、音色が微妙に変わっていくので、印象深い音になります。これが”モズライト”の魅力だと、私は思っています。
 ですから、自作するボディは是非ともバスウッドでなければなりません。バスウッドは入門者ようの安いギターで使われるそうですが、堅くて重い木材のアルダーやアッシュといった高価な木材より、ノーキーが出会った当時の、モズライトギターの原型に近い音になるのではないかと期待するのです。
 そういうことで、バスウッドの木材をアイチ木材(株)aimokから購入しました。下の写真です。 
 
市内のDIY店でもSPFという2×8インチ(厚さ49mmで幅が20cm弱)のホワイト・ウッドなるものが3.5mの長さで売っております。これはふつうの建築材ですが、2枚横つなぎで使えないことはない。ただし、節がいっぱい入っており、うまく板取しないと加工に支障を来しますが、一度実験的に使ってみようかと考えています。安いですからね。
さすがに楽器用なので綺麗なもの。節など一つもない。

 上の写真は2匹の猫写真ではなく、板の厚さを見せるためのものです。ちなみに右が母猫(5歳)で左は1歳年下の娘猫。品物を開いたら「なに、なに?」と好奇心旺盛な猫のこと、たちまち登場となり、ごらんの通り。右の写真は、いたずら盛りの娘が板に寄りかかり母猫を襲うの図。

 さて、いい加減、ボディの加工の話に戻ります。外形を整形するために、まず、本物のモズライトを乗せて、寸法取ります。ギターの再度面は垂直ですので、ぴったりえんぴつを沿わせてなぞります。加工の最終段階で側面も綺麗に削るので、少し大きめにジグソーで切ります。厚さが49mmもあるので、曲線切りの刃では短すぎ、直線切りの長い刃を取り付けて切断。曲率の小さいところは曲がりにくいのですが、前後運動を入れてだましだまし切ります。このとき、注意しないと刃が弾力があるので外側に曲がって切れます。従って、裏側は少し大きめに切れてしまいます。この誤差も最終的にはストレート・ビットを付けたルーターという電動工具で修正する予定。 DIYが趣味なので電動工具類はほとんどの種類を持っていますが、ルーターは持っていませんでしたので、上等な鑿3種類と合わせて新調しました。ストレート・ビットの長さも最低30mm必要なのですが、これも付属品を入れて3つも買い揃えました。
ボディの上半分が終了。厚いのでゆっくり、慎重に作業をします。その方が刃の垂直が保てるからです。急ぐと、上述の誤差がすぐに発生します。
まだ、塗装も剥がしておらず、ビブラミュートもネックもついています。(奥に新調したルーターと鑿が見えますね。)これは、その後全部はずされて、ヤスリでつるつるに磨き上げられました。ネックの表面が少し削られてへこみ、いわゆるスキャロップになっていることに気がつかれるでしょう。これは使い込んだギターでフレットが摺り合わせで低くなっているので、チョーキングしやすいように、フレットとフレットの間を削ってあるのです。現在、私のギターでは3台がこれになっています。スキャロップという技術は昔は職人の大変な労力を必要としましたが、電動工具のある現代ではいとも簡単にしかも正確に加工できます。ディスクグラインダーにフレキシブルなペンキ剥がしの時に使う研磨剤の塗り込まれたスポンジたわしのようなツールで、あっという間に完成します。これが施工されたフレットは指が弦の真横から当てられるので、いたずらにニッケル製のフレットに弦を強く押しつけることなくチョーキング出来て、以後、あまりフレットが減らなくなります。ですから、新品のうちからスキャロップをやるギタリストもいるくらいです。もともと、チョーキングの機会が多いロック・ギタリストがやり出した技術です。本物のモズライトが手に入らなかった昔に、モズライトはフレットが低いんだと勘違いして吹聴した知ったかぶりのマニアがいましたが、本当は使い古したモズライトが売りに出されている状態を見たのでしょう。使い古したギターは度重なるフレットの摺り合わせでフレットが低くなっています。ギターというのは毎日使うような熱心なプレイヤーでは、同じ箇所のフレットがスチール弦で削られて凹みが生じます。これがひどくなると、その上のフレットとの相対高度が低くなるために、弦が上のフレットにさわるようになり、ビビリ音が出始めます。それを解消するには全体のフレットを平らなヤスリで平らになるまで削らないといけません。当然その分全体が低くなります。これに合わせてブリッジも少し下げ、だんだん、弦が指板に近づいていきます。この状態をみて、モズライトはフレットも弦も低いんだと知ったかぶるマニアが出現するのです。本物のモズライトは中古でしか見たことがないからです。現在の流通しているオールドというのがそれです。新品のモズライトのフレットが初めっから低いわけないじゃありませんか。また、脱線しました。
取り外したネックの取り付け部分の拡大です。このようにネックの方が少し傾いて取り付けられますから、ボディ側は一定の深さで溝を掘っておけばいいのです。測りましたらちょうど3cmの深さでした。ですから、この深さまで掘れるストレート・ビットがあれば事足ります。
2016年秋 
さっそく切り出しにかかりましょう。バスウッド材は確かに柔らかく加工しやすいです。その代わり、ねじ止めなどの組み立ては繰り返しは出来ません。ねじ穴の強度が足りないので、やり直すには何らかの補強が必要です。こういう楽器の組み立てについて、楽器フェアにモズレーの娘さんが来日したとき、実演を見ていましたが、ボルトオンのネックを取り付けたとき、力一杯締め付けていました。質問すると、堅く締め付けないと”あの音”が出ないと答えてくれました。まあ、そうでしょう。
ご覧のように、おしりの部分は少し大きめに切り出しました。モズライトの63年モデルはその後の65年モデルより、少しお尻が大きいのです。で、ちょっと、考えがあって、さらに大きめにしようと思いました。あとで、理由を述べます。ついで、ネックの取り付け部分の掘り下げと、マイクやボリュームなどのパーツの取り付け穴もストレート・ビットを取り付けた電動ルーターで掘りますが、その前にやりたいことがありました。それは、使い古した傷だらけのモズライトのセミ・アコースティック化です。 
モズライトのマイク

ところで、モズライトのマイクはモズレーが自慢するようにほかのギターに比べてコイルの巻き数が多いです。1万2500回も巻いてあり、それを昔はミシンを改良した機械を使い、手作業で巻いていました。いまでも、モズライトの娘のダナ・モズレーは父親譲りの手巻きにこだわっています。当然、手巻きは断線しやすいです。私も、USAのマイクを2個もリードを弾くときに使うリア用にと、ジャパンのマイクと交換するために買いましたが2個とも断線して、いまはどこに行ったやら。それで、また、ジャパンのマイクに戻しておりますが、交換した当初、比較するとマイクははっきりとジャパンの方がクリアな音が出ました。USAは曇ったような音で、あまり感心しなかったことを記憶しています。手巻きのマイクは当たりはずれが大きいと思います。なにしろ、くるくる回るミシン駆動のコイルの芯に、非常に細い導線を手の感触を頼りに巻くのですから、テンションが不安定で、もしかするとあちらこちら伸びて、断線寸前の箇所が出てくるのではないかと思います。銅のヤング率は小さいですからね。モズライトの音の個体差は案外ここにあるかもしれません。ジャパンは断線しないようにテンションを一定に保ちながら精密な機械で巻くのですから、まあ、工業的にはジャパンの方が信頼性が高いです。オリジナリティには問題がありますが、製品としては高度な技術を駆使した製品が優れます。それと、たくさん巻いたコイルのインピーダンスは高く、周波数特性がこの値に反比例しますので、高音が出にくくなります。真空管アンプのように入力段から高インピーダンスのデバイスを使わないとハイ落ちの音になります。すなわち、トランジスタ・アンプでは全くだめで、モズライトの音は真空管アンプを使って初めて真価を発揮します。ツイン・リバーブが良いのではなく真空管アンプだから良いのです。現在ならフェンダーの小型の真空管アンプでもいい音が出ます。

 あと、音が変わる要素はポールピースと呼ばれるマイクの外に飛び出した部分の形状にあります。つまり、磁界の形です。ギターマイクは磁石を弦の下に置き、磁性体である鉄のポールピースで磁界を弦に誘導し、これで弦を磁化します。そして、弾かれた弦の運動により電磁誘導の原理で磁石の周りにおかれたコイルに起電力が発生し、これが音の信号となってアンプの入力段に電圧となってかかるわけです。FETや真空管の場合は電圧が信号ですが、トランジスタでは電流が重要です。このときの電流値はマイクのインピーダンス(交流抵抗)と直流抵抗値が大変重要で、これも、アンプが真空管でないとだめな理由となります。
 また、当然磁界の外に出た形については、後述することにしましょう。

補足:中学校で習うオームの法則でV=RIをご存じでしょうが、このRは中学校では直流抵抗といい周波数依存性がありません。振動する信号ではRのほかに周波数に依存する抵抗値Zが加わり、Z+Rのようになります。正確にはこれの幾何平均ですが、アンプが電圧で受けるか電流で受けるかで、音が変わるわけです。細いコイルをたくさん巻いたマイクはRも大きいです。RとZの配分で音が変わるのがわかりますね。ギターのボリュームは直流抵抗値を変化させて分圧するわけですが、ボリュームを絞るとコイルの抵抗値の直流成分が大きくなります。アンプで音を絞るのとギターで絞るのとでは音が違いますね。あれは、このことが原因です。ノーキーがアパッチやダイヤモンドヘッドで“ピュッピュッ”とやる弦を擦る音とか、ブリッジ外奏法と呼ばれる、ローラーブリッジの外で弾いた音を大きくしたい場合は真空管アンプでないとだめです。

 さて、そのモラレスの重いボディについては、裏を鑿で彫り込み、出来るだけ中空にして軽くする作戦です。裏がスケルトンのままでは弦を張ったときにボディの強度が足りなくなりますので、手持ちの3mmの化粧ベニヤ板で裏ふたつくり、2駅混合の接着剤でふたをしました。なんちゃってセミ・アコです。これがまた予想を裏切り、偉くいい音で鳴ったものです。セミ・アコの特徴であるアタック音が強くてエッジの立った歯切れのいい音で、バンドの中でも音が埋もれることがなく存在感を際だたせます。今思うに、共鳴音がボディを経巡ることにより音のスペクトル(倍音成分の強度)が変わり、アタック音を際だたせたのです。いい加減に作ったボディの内部構造のせいで、うまい具合に音のスペクトルが変わったのです。ソリッド・ギターであるモズライトも、バスウッドというあまり高級ではない木材の特性で、共鳴音がアタック音を際だたせてるのではないかと愚考します。楽器用の響きの良い高級木材を使うと、この共鳴音が綺麗に鳴りすぎて大きいために、アタック音が埋没します。その典型がギブソンではないでしょうか。安定したピッチでサスティーンが長いのでジャズのような楽曲には向いていますが、ベンチャーズサウンドを真逆なサウンドになります。ベンチャーズサウンドはギターも打楽器なのです。サスティーンは短く、しかも、アタックが際立ち、高調波のスペクトルが時間的に変化していきます。ベンチャーズ付きの方なら肯定されるでしょう。ベンチャーズの曲で、これが一番現れているのがダイアモンドヘッドです。私はこれにやられました。 
使い古したジャパンのモズライトを63年タイプの、しかもセミ・アコースティックにして復活!

 これは、昔、職場でベンチャーズ。バンドを組んだことがありましたが、そのとき、リズムギターを担当する予定の人が持ってきたのが”モラレス”というモズライトタイプのギターでした。そして、ついに一度も練習に参加することなく、ギターだけ持ってきて、終いには取りに来なかったために、処分に困り、代表者だった私がもらい受けたものでした。このギターは大変重く、モズライトの2倍までは行かずとも1.5倍程度は重かったのではないでしょうか。ちなみに、このギターは当時ゼンオンというメーカーが、ベンチャーズ人気にあやかるために製造したもので、当時はエレキ・ギターの在庫が足りなくなり下駄屋がエレキ・ギターを作って売り出すほどのエレキ・ブームだったのです。当然、本来の楽器屋も、このようなモズライトまがいのギターを売り出しました。なにしろ、1ドルが360円という固定相場の時代、本場物は非常に高価だったのです。それで、このようなギターがいっぱいショーウインドウに並びました。モラレスとは違い、もう少し素性の良いギターもありました。モズレーに指導を受けた盛岡一夫氏が日本製のモズライトを作ったのです。今は幻のファーストマン社のAvenger Modelで、これは当時グヤトーンと並んでエレキを作っていたテスコの子会社でしたが、盛岡一夫が云うには、本場物と区別化するためにボディの形状が少し変えられており、いわゆるジャーマン・カーブが違います。 このギターはファーストマン社が倒産したために、お茶の水の楽器屋で非常に安くたたき売られたものを、私は所有していますが、結構本物のモズライトの音が出ました。セミー・モズレーによれば、モズライトは4つの肝を守って作れば誰でも作れるのだそうですが、その肝心の4つの肝は”秘密”だとか、盛岡一夫のアップロードした記事の中に書いてあり、秘密の中の一つがネックの板取だったそうです。詳細は語られていませんが、たぶん木材の年輪が作り出す目の使い方のことだと思います。
閑話休題、セミ・アコに戻します。
 バスウッドのボディを完全自作する前に、このセミ・アコでまずツールの使い勝手などの小手調べです。木工はさんざんやってきましたが、ほとんどが大きなもので、一番大きなDIYは中2階の下のガレージを自分の部屋に改造するというものでした。これはほとんど家を造ったようなもので、モルタル造りで外装はリシン掻き落としという本格的なものでした。アルミサッシも裏表2カ所に取り付け、壁は厚く防音仕様で、この中でファミリー・バンドファミチャーズが演奏したのです。住宅地の中ですので、地下室のような厚い壁を持った部屋が必要だったのです。ですから、逆に、この度のギターのような小物は、研究室で使うことを目的とした小型の本棚以外、初めての小型の細工物です。勝手が違うので準備運動が必要です。そして、精巧な模造品作りのスキルアップを兼ねています。ギターは、手作り感も価値がありますが、やはり、工業製品の完璧さも感じさせたいのです。…まあ、無理ですが。

話を戻します。この成功したモラレス改良の第2弾として、もう少しましなギターで同じ実験をしたくなりました。ファミチャーズで散々活躍し、一番長く引き倒したジャパンの白いモズライトです。ボディ表面には上から望遠鏡が落ちたときの深い傷もあります。というわけで、今まで活躍してくれた古いボディーを削って生まれ変わらせてやろうと思いました。いい音で鳴ればそのままにして、新しく作ったボディはもう一つ持っているジャパンのモズライトのボディと換装します。盛岡一夫のファーストマンが倒産したときに職人たちが独立して作ったというモズライト・ジャパン黒雲製で、これは日本の物作りの良さを感じさせる非常に精巧な出来映えのモズライトですが、肝心の音がいまいちです。音が綺麗に響きすぎます。日本人の耳に心地よい「ちんとんしゃん」という高音よりの音です。モズライトはもっと低い中音に偏ったバターくさい音でないといけません。この違いは、主にボディにあると思っているのです。マイクも違うでしょう。マイクも本物はあまりきらきらした高音は出ません。渋い感じで、つやっぽいけれど光っていないという感じ。でも、一般的な日本人の好みは高音寄りのきらきらした音が好みのようですが、それだと。アメリカン・フレイバーになりません。
 オーディオ・スピーカーの音作りにも同じことがいえて、日本製のスピーカーは多くがどんしゃりで、「ちんとんしゃん」です。YAMAHAのスピーカーやアンプのサウンド・ポリシーがこれです。YAMAHAとJBLの違いだと云っても、わかる人にはわかるはずです。この人種による耳の違いは、実はあらゆる点で共通する違いで、味覚についても似たような経験をしました。横浜のミッション・スクールの外人だらけのフェスティバルに紛れ込んだことがありますが、そこの模擬店で食べたハンバーグのなんとアメリカっぽかったことか。ほとんどソースの付いていない焦げ焦げの荒っぽいハンバーグでしたが、野性味があってとてもおいしかったことを覚えています。アメリカ製ってこれですよね。本筋をはずしていない、生命力のある製品です。日本製だと、まず照り焼きハンバーグに代表される凝りに凝った味付けで、おいしさをフィーチャーするのですが、ふと気がつくと別物になっている、といった次第。
この左の写真にスカイ・ブルーで塗装されているのがすっかりカスタマイズされた
セミアコのモラレスです。最初の状態はひどい状態で、ネックは逆ぞりになっていて、弦高が高く、極めて弾きづらいものでした。私の元に来て、しばらくは放置されていましたが、なんとかまともなギターにしてあげようと思い、まずネックを本物のモズライト並みに細く薄くけ削りました。これは勇気が要りましたが、ダメ元です。ついで、ネックの反りを治すために、まず、水に浸して湿らせてから、ネックの両端に重りを付け真ん中を支えた状態で反りが直るまで放置し、最後にネックに仕込まれている鋼鉄製のテンション・ロッドのネジを締め付けて完成です。ネックの反りというものは弦を張った状態で軽く順ぞりになっているのが理想です。これにより弦高が最低にできるのです。前の持ち主はこのことを理解せずに順ぞりはいかんと勘違いして、テンション・ロッドをきつく締め付けて逆反りにしていた模様です。逆反りだと、弦高がハイポジションになるにつれますます高くなり、弾けたものではありません。たぶん、ローポジションのコードを押さえる弾き方しかしなかったのでしょう。なにしろウエスタンキチガイで、髪型から服装からカウボーイ・スタイルをしていましたから。リードギターでハイポジションを必要とする人なら、こんなことにはならなかったのですが、開放弦やローポジションのコードをかき鳴らすだけでしたので、これでも良かったのかも知れません。
 
 私は、このネック・ヘッドをM型にカットしてモズライト風にしました。モラレス本来は単なる軽くウエーブした形状です。

 ちなみに、写真にはモズレータイプのトレモロ装置が付けられたテレキャスターが写っております。これも、ネックは細く薄くされておりまして、テレキャスター・デフォルトではありません。ボリュームやマイクセレクターの位置も逆になっており、上から音量、トーン、セレクターの順に配線も替えてあります。大体、テレキャスターのデフォルトの位置はセレクターが先頭にあり、変です。
ギター・マイクのポールピースが作る磁界の形が音に'味”を付けるの巻
モズライトの黒いマイクに6個の丸いネジ頭がついていますね。あれは、弦ごとに音量を加減するためのセミ-・モズレーの工夫ですが、あの形状をよく見て下さい。プラスねじのくぼみが付いたドーム状の形をしています。あの下には磁石があって、ネジは磁性体ですから磁石により磁化されます。持って回った言い方ですが、要するにネジの頭は磁石と同じ状態になっています。(それが証拠に、ここにドライバーを近づけると、かちっとくっつきます。)つまり、ねじ頭から磁力線が弦のある空間にでているのです。その形状がここでのメインテーマです。
 その前に、なぜエレキギターは音がアンプで増幅されて音を出せるか、という話を念のためにしておきましょう。
 まず、基礎知識は、電磁誘導のファラデーの法則です。これは、高校の物理を履修していない人には過酷な話で…(最近は理科は生物とか化学を選択するだけでも高校資格が取れるようになったのですが、ずーっと昔は理科は物理、化学、生物、地学の4科目全部を履修しなければなりませんでした。たぶん、エレキ少年達は物理を履修しているはずですのですが)、でも、ほとんど理解していないか忘れていますね。理科離れも進んでいることだし、そのなかでも物理なんてね。

さて、ネジの磁界によって磁化された弦の振動は、マイクの中に巻いてあるコイルを貫く磁力線の数が変化しますので、ファラデーの法則により、コイルに誘導起電力が発生します。これがシールドを通りアンプの入力されて増幅されて音になる訳ですが、そもそも、弦を磁化しているネジからでている磁力線はどういうかたちをしているでしょうか。これは、物理を専門に勉強した人しか答えられない話で恐縮です。答えは、金属の表面に垂直に放射されるということです。丸いドーム状の金属からは、光が電球から放射されるように、もしくは、頭の毛が頭皮に対して垂直に生えているように、というより、ウニの棘が放射状に生えているように磁力線がでているということです。その中で弦が振動したら、弦を貫く磁力線の密度も一様でないので、弦が正弦波で振動しても、正弦波ではなくなります。これは、アンプでいう非線形の増幅率がもたらす'歪み'となります。弦が場所を変えても磁力線が一様な形であれば、このようなことはありません。ギターマイクにはいろいろな形状がありますが、表に出ている金属がバータイプのマイクでは一様で、ねじ頭だと非一様です。特に、モズライトの場合は、さらにドーム状で一様な磁界ではありません。まあ、弦が一度磁化してしまえば、それによる振動はコイルに忠実に起電力を発生させるから、磁界の形には関係ないという議論も出てくるでしょうが、私の見解では、この非線形性がモズライト固有の音の”コク”を作るのだという結論です。話が長くなるので、いきなり、端折ります。
 もちろん、アンプもくせ者です。なにしろ、アンプには真空管式とトランジスタ式に大別されます。真空管式は入力が小さいときには線形性が良いのですが、大入力時には大いに歪みが出てきます。増幅率の直線性があまりよくないのでね。だから、ベンチャーズの65年ライブのように、アンプをフルドライブした音が録音されることになりました。音が歪まないスタジオ録音では、モズライトギターのマイクの非直線性だけで、比較的綺麗な音で録音されますが、ライブの迫力は生まれませんね。真空管アンプのフルドライブの音をシミュレートするものがエフェクターの”ファズ”や”オーバー・ドライブ”ですが、しょせん、まがい物です。わたしは、そのまがい物をいくつも買ってはがっかりさせられてきました。(`Д´メ)  一方、トランジスタ・アンプの方は、小さい音から大きな音まで直線性が良く、綺麗な音が出ますが、フルドライブはいきなりクリップするので、非常に耳障りな奇数倍音の歪みが出てきます。トランジスタアンプではフルドライブは禁物です。また、真空管アンプでも、フルドライブさせるともの凄い音量ですから、出力の小さなアンプの方が結果的には65年ライブに似た音作りには良いでしょう。
 ちょっと、特殊なマニアの音作りで、じつに近所迷惑な音になりますね。

 アマチュアがなんとかあの”音”をだそうと努力しますが、あの時代のアンプでないとあの”音”はでないと思います。晩年のベンチャーズだって再現できないのですからね。ギターが同じで弾いている人が同じでももアンプが違う、ギターが違ってアンプも違って、おまけに弾き方すら違ったら…、絶対に同じ音はでないと思うのです。過ぎ去った昔は帰ってこない…。
 話はだんだん怪しくなりますが、弾いている人が年齢を重ね、ピックも薄くペラペラになり、弦を押さえる指の力や指自体の堅さが変わると、音は変わってくると思います。それと、弦を弾く強さも変わるでしょう。ノーキーの晩年、ほとんどサム・ピックでしたが、そのノーキー仕様のサムピックをライブ会場で売っていたので買いましたが、すごく繊細な小さなサムピックでした。無骨な私のような者がそれを使うと、弱くて音になりません。あれは、マイクのボリュームをフルにして、アンプのボリュームも大きくして感度を上げ、繊細なピッキングで弾くからノーキーの音になるのです。弱く弾くからプリングも、ハンマリングもピッキング・ニュアンスもしっかり聴こえるのだと思います。下手な人が真似てアンプのボリュームを上げて弾いたら大変なことになりますよ。(`Д´メ) 

1.モズライトについて(本文)
2.ボディの完全制作(2016年夏本文))
3.古いギターのセミ・アコ化(2016年秋から冬)
4.セミアコ・モズライトの音と演奏サンプル(2016年冬)
5.バイオリン・ギター(2017.春から夏)
6.オリジナル・デザインの制作(モラレスの改造 2019.4.27)

 
コンテンツが増えましたので、目次というショートカットを作り付けました

目次

1.モズライトについて(本文)
2.ボディの完全制作(2016年夏本文))
3.古いギターのセミ・アコ化(2016年秋から冬)
4.セミアコ・モズライトの音と演奏サンプル(2016年冬)
5.バイオリン・ギター(2017.春から夏)

6.オリジナル・デザインの制作(モラレスの改造 2019.4.27)

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